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東京高等裁判所 昭和63年(行ケ)151号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実(特許庁における手続の経緯、本願発明の要旨及び本件審決の理由の要点)については、当事者間に争いがない。

二 引用発明について

成立に争いのない甲第五号証によれば、引用例には、引用発明の目的、構成及び効果について、次のとおり記載されていることが認められる。

1 目的

(一) 引用発明は自動合焦装置を備えたカメラの安全装置に関する。(甲第五号証第一頁右下欄一八行ないし一九行)

(二) この種のカメラにおいて、手動合焦と自動合焦に切り換え操作できるレンズ鏡筒を備えたときに、レンズ鏡筒が手動合焦操作の状態で誤つて自動合焦装置を作動させると、適正な合焦ができなくなつたり、また自動合焦装置の電力を無駄に使つてしまうという欠点が生ずる。

引用発明は、このような欠点を解消するために、自動合焦装置の給電回路をレンズ鏡筒の状態に応じて開閉し、レンズ鏡筒が手動合焦操作の状態にあるときは自動合焦装置への給電を断つようにした安全装置を供給することにある。(同第一頁右下欄末行ないし第二頁左上欄一二行)

2 構成

(一) 自動合焦装置を備えたカメラにおいて、手動合焦の状態か自動合焦の状態かを示す信号部材を有するレンズ鏡筒の、この信号部材に連動してレンズ鏡筒の状態を検知する手段と、検知手段がレンズ鏡筒の手動合焦の状態を検知すると自動合焦装置への給電を阻止し、また検知手段がレンズ鏡筒の自動合焦の状態を検知すると自動合焦装置への給電を許す手段とを備えたことを特徴とする安全装置。(特許請求の範囲第一項)

(二) 図(本判決別紙引用発明図)は引用発明の実施例を示す。まずカメラ101から説明するに自動合焦装置102は公知の如く受光素子によつて被写体からの光を受け、この出力に基づいて合焦状態を検出し、作動部材103によつて後述の如くレンズバレル8の位置を制御し、合焦調節を行なう。(同第二頁右上欄四行ないし一〇行)

(三) 手動合焦操作の場合には、固定指標2と所望の距離目盛が対向するように手動合焦操作環5を回転させる。これによつてダブルヘリコイド環3が回転し、手動合焦調節環4は第一の直進ガイド溝1aに第一のガイドピン6が案内されることによつて、光軸0の方向に摺動する。そして手動合焦調節環4が図中左方向に摺動すると、突起7bと段部8aが係合することによつてレンズバレル8も左方向に摺動する。そして至近距離側へ合焦位置がずれる。また調節環4が右方向に摺動すると、バネ10の作用により突起7bと段部8aが係合するようにレンズバレル8は右方向に摺動する。このように調節環4とレンズバレル8とは操作環5の回転に応じて左右に摺動し無限遠側へ合焦位置がずれる。その結果、所望の距離に焦点合せができる。

ここで調節環4の摺動量は第一の直進ガイド溝1aの中を第一のガイドピン6が移動できる量により定まり、それはレンズの無限遠から至近撮影距離をカバーするようになつており、溝1bと突起5aがその制限となる。

次に、自動合焦操作の場合には、まず操作環5の自動合焦位置目盛AFを固定指標2に対向させる。この自動合焦の状態が第1図(本判決別紙引用発明図第1図)に示されており、このとき、第一のガイドピン6は第一の直進ガイド溝の右側端に作置(位置の誤りと認める。)しており、また、第二のガイドピン9は第二の直進ガイド溝4aの左側端から第一のガイドピン6の移動量あるいはそれ以上の間隔をもつて位置している。この間隔が自動合焦時のレンズバレル8自体の無限遠から至近撮影距離に対応した移動を可能にするのである。

このような第1図の状態においては、自動合焦連動突起8bと作動部材103とが係合するようになる。また、自動合焦信号突起7bによつて検知スイツチ104が閉成される。この状態でシヤツタレリーズ釦110が第一段階まで押圧されるとスイツチ105が閉成されるから、電源106からの給電により、発光ダイオード107が点灯してフアインダー内には表示記号が表われ、自動合焦が可能なことを表示すると共に、自動合焦装置102が作動し、その結果、合焦用レンズバレル8は所定の撮影距離に達するまで作動部材103によつて左方向にバネ10に抗して移動させられる。そして、レンズバレル8の所定の移動が達せられると作動部材103の動作はロツクされ、その後にシヤツタのレリーズが行なわれる。(同第二頁左下欄五行ないし三頁右上欄一五行)

(四) 自動合焦信号突起7aが自動合焦の状態にあると(実線図示の状態)、……オートフオーカス釦121は押下げ可能となり、押圧すると……自動合焦装置102が作動する。そして、作動部材103による合焦が完了すると、オートフオーカス釦121の押圧を解除し、今度はシヤツタレリーズ釦132を押圧して、シヤツタレリーズを行なう。(同第三頁右下欄一一行ないし第四頁左上欄四行)

3 効果

引用発明によれば、レンズ鏡筒の信号部材7aと連動し、レンズ鏡筒が手動あるいは自動合焦の状態にあるのかを検知する手段104、122と、検知手段が手動合焦の状態を検知すると自動合焦装置への給電を阻止し、またこれが自動合焦の状態を検知するとこれを解除する制御手段104、123とを備えることによつて、前述のカメラの動作、電力消費の不都合が除かれる。(同第四頁左上欄一五行ないし右上欄三行)

三 認定判断の誤り1について

1 原告は、本件審決が、引用例には「撮影レンズ後方において該撮影レンズの焦点合致を検出する光電的手段」が記載されていると認定したことは誤りである旨主張する。

(一) この点について、原告は、「本願発明の要旨における「撮影レンズ後方において該撮影レンズの焦点合致を検出する光電的手段」とは、撮影レンズの焦点結像状態を検出する受光素子で、撮影レンズに関しフイルム面と光学的に等価な位置におかれ、撮影レンズの焦点合致を検出する受光素子である。」旨主張する。

しかしながら、受光素子が光電的手段であることは技術常識であるところ、受光素子が「撮影レンズLに関しフイルム面と光学的に等価な位置におかれ」る点については、本願発明の特許請求の範囲には、「撮影レンズ後方において該撮影レンズの焦点合致を検出する光電的手段」とのみ記載されているにすぎず、受光素子の配置については本願発明の要旨ではないから、原告の右主張は理由がない。

(二) また、原告は、引用発明における「合焦」とは「撮影距離にレンズバレル8を摺動させる」ことである旨主張する。

前記のとおり、引用例には、「合焦」の文字は、「自動合焦装置」、「自動合焦と手動合焦に切り換え操作できる」、「手動合焦操作の状態」、「適正な合焦ができなくなつたり」、「自動合焦の状態」、「合焦状態を検出し」、「合焦調節を行なう」、「合焦位置がずれる」、「自動合焦が可能」、「合焦用レンズバレル8」、「合焦が完了する」等々として使用されているところ、引用例の記載内容及び前後の関係からみて、これらのうち「自動合焦装置」、「自動合焦と手動合焦に切り換え操作できる」、「手動合焦操作の状態」、「適正な合焦ができなくなつたり」、「自動合焦の状態」、「自動合焦が可能」、「合焦用レンズバレル8」、「合焦が完了する」の場合の合焦は、「焦点を合わせる」あるいは「焦点合わせ」の意味と解することができ、「合焦状態を検出し」、「合焦位置がずれる」場合の合焦は、焦点合わせがなされた状態である「焦点合致」を意味するものと解され、また「合焦調節を行なう」の場合の合焦は、そのいずれとも解し得るから、引用発明における合焦が一義的に「撮影距離にメンズバレル8を摺動させる」ことを意味するとは認められず、したがつて、原告の右主張は理由がない。

(三) ところで、前記のとおり、引用例には、自動合焦装置について「自動合焦装置102は公知の如く受光素子によつて被写体からの光を受け、この出力に基づいて合焦状態を検出し、……合焦調節を行なう。」と記載されているから、引用発明は、公知の受光素子によつて焦点合致を検出するものであるところ、成立に争いのない乙第一号証ないし第三号証によれば、乙第一号証ないし第三号証記載の発明は、いずれも引用発明の出願前に公開されたものであつて、撮影レンズ後方において、被写体からの光を受けて該撮影レンズの焦点合致を検出する受光素子が記載されていることが認められ、自動焦点調節装置において、撮影レンズの焦点合致を検出する受光素子、すなわち光電的手段は必須の技術的手段であるから、引用発明はこれら周知の「撮影レンズ後方において該撮影レンズの焦点合致を検出する光電的手段」を採用し得ることは明らかである。

したがつて、引用発明は、公知の受光素子によつて焦点合致を検出するものであるところ、受光素子は、撮影レンズの合焦状態、すなわち、被写体のフイルム面での結像状態を検出するものであり、該受光素子の出力による焦点調節により撮影レンズが移動して被写体の像が正しくフイルム面に結像するようにしたものである。

また引用例の第1図(別紙引用発明図第1図)には、レンズ鏡筒とともにカメラ101が二点鎖線で記載され、カメラ101の内部には自動合焦装置102が撮影レンズLの後方に記載されているから、引用発明は、撮影レンズ後方において該撮影レンズの焦点合致を検出する光電的手段を有しているものと解される。

なお、原告は、乙第一号証が引用発明において公知として記載されたものであることを争つているが、前記のとおり、乙第一号証には、「被写体からの光を受け、この出力に基づいて合焦状態を検出する」ための受光素子が記載されているから、乙第一号証記載の受光素子は、引用例に公知として記載された受光素子に該当するものである。

(四) したがつて、本件審決が、引用例には、「撮影レンズ後方において該撮影レンズの焦点合致を検出する光電的手段」が記載されていると認定判断したことに原告主張の誤りはない。

2 また、原告は、本件審決が、引用例には「前記移動機構と前記制御手段とをレンズマウント部の開口を貫通し連結可能とする作動部材」が記載されていると認定したことは誤りである旨主張する。

(一) 前掲乙第一ないし第三号証によれば、カメラ本体に着脱可能な撮影レンズを有するカメラ、いわゆる一眼レフレツクスカメラは、本願出願前から周知であると認められ、この種カメラにおいて、カメラ本体の開口と撮影レンズの開口とを一致させて連結する連結部が「レンズマウント部」を構成するものであるところ、前記のとおり、引用発明は自動合焦装置を備えたカメラの安全装置に関するものであつて、これが一眼レフレツクスカメラに適用できることは明らかであり、また前掲甲第五号証によれば、引用例には「レンズマウント部」との明示的な記載はないものの、第1図(別紙引用発明図第1図)において101として二点鎖線で表示されている部分は、一眼レフレツクスカメラにおいて「レンズマウント部」に相当する部分であると認められるから、引用発明において、カメラ本体側の制御手段と撮影レンズ側の移動機構を連結する「作動部材103」がその「レンズマウント部」の開口を貫通していることは、その第1図からみても明らかである。

(二) この点に関し、原告は、引用発明の作動部材103はレンズバレルの光軸からは離れた小さな開口を貫通しており、レンズバレル8の光軸を中心としたレンズ開口を貫通していない旨主張する。

しかしながら、本件審決は、作動部材がレンズマウント部の開口を貫通している旨認定しているのであつて、レンズバレル8の光軸を中心としたレンズ開口を貫通していることを認定している訳ではないが、引用発明においては、作動部材の位置についての限定はないから、レンズバレルの光軸から離れた小さな開口を貫通している場合はもとより、レンズバレル8の光軸を中心としたレンズ開口を貫通している場合も含まれるのであり、したがつて、原告の主張するところが、引用発明の作動部材103がレンズバレルの光軸から離れた小さな開口を貫通している場合に限られる趣旨であれば、右主張は理由がない。

(三) したがつて、本件審決が、引用例には「前記移動機構と前記制御手段とをレンズマウント部の開口を貫通し連結可能とする作動部材」が記載されていると認定したことに、原告主張の誤りはない。

四 認定判断の誤り2について

1 原告は、引用発明を本願発明に適用できず、また引用発明にはレンズマウント部を有しカメラ本体に着脱可能な撮影レンズを有するカメラについては何も記載されていない旨主張する。

しかしながら、本件審決は、「引用発明がカメラ本体に着脱可能な撮影レンズを有するカメラ……に適用できる」と認定したのであつて、引用発明を本願発明に適用できる旨認定したものではない上、前記三2記載のとおり、引用発明には作動部材がレンズ開口を貫通する場合も含まれるから、原告の主張はその前提において理由がなく、また、引用発明にはレンズマウント部について明示的な記載はないものの、レンズマウント部を有しカメラ本体に着脱可能な撮影レンズを有するカメラについても実質的に記載されているから、原告の右主張は失当である。

2 「規制部材」及び「連動部材」について

(一) 本願発明の「連動部材」の構成について

(1) 原告は、「本願発明の要旨におけるレンズマウント部の開口とは、カメラボデイへの取付マウントの内側、すなわちレンズマウントの開口であり、本願発明の連動部材5aはレンズマウント部の開口を貫通して撮影レンズLの光軸を中心として回転する」旨及び「本願発明の連動部材5aは撮影レンズ側に備えられる」旨主張するが、前記のとおり、本願発明の特許請求の範囲には、連動部材に関しては、「レンズマウント部の開口を貫通する」とのみ規定されているにすぎないから、本願発明の要旨に基づかない主張であつて失当である。

なお、原告は、本願発明の要旨におけるレンズマウント部の開口とは、レンズマウントの開口である(原告の主張するレンズマウントの開口とは、撮影レンズLの光軸を中心としたレンズ開口と解される。)旨主張するが、本願明細書の発明の詳細な説明の欄にもこれを限定する記載はなく、ただ、実施例の説明として、後記(2)<1>に認定のとおり、連動部材5aがレンズマウントの開口内を移動することが記載されているにすぎず、したがつて、本願発明における連動部材は、レンズマウント部の開口を貫通していればよいから、レンズバレルの光軸から離れた小さな開口を貫通していても、その開口がレンズマウント部にある限り、それをも含むことは明らかである。

(2) また、原告は、「本願発明の連動部材5aの位置を規制する規制部材(3、18)は、撮影レンズを装着したとき撮影レンズ側の連動部材5aとカメラ本体に設けた制御手段とを連結するためのカメラ本体に設けられた必須の機械的部材であり機械的中間部材ではない」旨主張する。

規制部材が機械的部材であることについては当事者間に争いがなく、前記のとおり、本願発明の特許請求の範囲には、「制御手段は、……連動部材の位置を規制する規制部材と、前記光電的手段の出力に応じて規制部材を制御する電磁手段を含む制御回路とを有する」と記載されているから、本願発明における規制部材は、電磁手段を含む制御回路によつて制御され、連動部材の位置を規制するものである。

成立に争いのない甲第二号証によれば、本願明細書の発明の詳細な説明の欄及び図面には、規制部材の語を用いたそれについての直接の記載はないものの、規制部材に該当する摺動板(3、18)の構成及び作動については、次のとおり記載されていることが認められる。

<1> 第1図(本判決別紙本願発明図第1図)は本発明第一実施例の焦点制御機構の概略を示し、図において、……Pは撮影レンズLの焦点結像状態を検出する受光素子で、撮影レンズLに関しフイルム面と光学的に等価な位置におかれ、その出力は焦点制御回路FCに入力され、撮影レンズがピント面に結像していない場合、焦点制御回路FCにより電動モーターMが駆動される。

電動モーターMが駆動されると歯車2が回転し、歯部3aを有する摺動板3はピン4a、4bにガイドされて摺動し、ピン3bは矢印a方向にバネバイアスされカメラボデイへの取付マウントの内側即ちレンズマウントの開口内を移動する繰り出しリング5の連動腕5aと係合し、摺動板3の位置に応じて繰り出しリング5の回転位置を制御する。(甲第二号証第五頁七行ないし第六頁一七行)

<2> 第5図(本判決別紙本願発明図第5図)は、焦点制御機構についての他の実施例を示したもので、第1図の実施例と同じ部材には同じ符号を付し、……図において、……18は第1図の実施例の3に対応する摺動板で、その一辺には停止レバー16の爪16bが係合する歯部18aが形成され、案内ピン4a、4bに案内され、図において、上下方向に摺動可能になつている、18bは第1図の3bに対応する連動ピン、18cは突出部で、シヤツターレリーズ前、係止レバー19の三角状突起19aが係合し、バネ20に抗して摺動板18がチヤージ位置に係止される。係止レバー19は、第6図に正面図で示す如く、軸21に軸支され、バネ22によつて反時計方向に付勢されており、その三角状突起19aは、バネ20による摺動板18の移動方向に対向する辺は傾斜がきつく、反対側は傾斜がなだらかで、摺動板18が図示しない機構により、シヤツターチヤージ操作によつてチヤージ位置へ復帰せしめられる時、摺動板18の突出部18cが乗り越えられるようになつている。又、係止レバー19の折曲部19bは、レリーズボタン1の下方に臨み、レリーズボタンが押下されると、その最終行程において三角状突起19aによる摺動板18の係止が解除される。(同第九頁一七行ないし第一一頁一〇行)

<3> このような構成において、……レリーズボタンを更に押し下げると係止レバー19の折曲部19bが押し下げられ、摺動板18は、係止が解除されて、バネ20の力によつて摺動し、それに伴なつて撮影レンズLの可動枠6が光軸方向に繰出され、焦点調節が行なわれる。受光素子Pが合焦状態を検知すると、焦点制御回路FCによつて電磁部材15の電磁コイル15bが励磁され、停止レバー16は、バネ17によつて反時計方向に回動され、その爪16bが摺動板18の歯に係合し、摺動板18を停止せしめ、その結果、撮影レンズLの可動枠6も合焦位置に停止せしめられる。(同第一一頁一一行ないし第一二頁四行)

<4> 本判決別紙本願発明図第1図、第5図及び第6図記載のとおりの図面

右事実によれば、本願発明における規制部材は、第1図の3及び第5図の18とその形態は異なるものの、いずれも電磁手段によつて連動部材の位置を規制するために、電磁手段と連動部材との間に介在され、電磁手段による制御を連動部材に伝達するものであるから、この規制部材は、機械的中間部材であると認められる。

なお、原告は、本願発明における規制部材は、カメラ本体に設けられた必須の機械的部材である旨主張するが、本願発明の規制部材が、本願発明の構成からして必須の機械的部材であるとしても、その取付位置及び機能は、右認定のとおり、電磁手段と連動部材との間に介在され、電磁手段による制御を連動部材に伝達するものであるから、機械的中間部材であることには変わりはない。

したがつて、本願発明における規制部材が「機械的中間部材」ではない旨の原告の主張は理由がない。

(二) 引用発明の「自動合焦装置」及び「作動部材」について

原告は、「引用発明の自動合焦装置102は電気回路要素であつて機械的部材ではなく、また、引用発明の作動部材103は、撮影レンズの焦点調節を自動的に行なうための規制部材(制御手段)に該当する」旨主張する。

前記のとおり、引用例には、「自動合焦装置102は公知の如く受光素子によつて被写体からの光を受け、この出力に基づいて合焦状態を検出し、作動部材103によつて後述の如くレンズバレル8の位置を制御し、合焦調節を行なう。」、「自動合焦装置102が作動し、その結果合焦用レンズバレル8は所定の撮影距離に達するまで作動部材103によつて左方向にバネ10に抗して移動させられる。そしてレンズバレル8の所定の移動が達せられると作動部材103の動作はロツクされ、その後シヤツターのレリーズが行なわれる。」と記載されており、また、前掲甲第五号証によれば、引用例の第1図及び第2図(本判決別紙引用発明図第1図及び第2図)には自動合焦装置102と作動部材103とが一点鎖線で結ばれていることが認められ、右事実によれば、引用発明における自動合焦装置102は電磁手段を含む制御回路であり、作動部材103は、自動合焦装置102とは区別して記載されており、合焦操作時に自動合焦装置102の出力によつて位置規制がされるものであつて、本願発明における連動部材に相当するものであると認められるから、電磁手段を含む自動合焦装置102と作動部材103との間に、その作動部材103の作動を規制するための機械的中間部材は、必要に応じて適宜設置されているものと解される。

(三) したがつて、本件審決が「本願発明における前記「連動部材の位置を規制する規制部材」は、前記電磁手段の作動を前記連動部材に伝達させるための機械的中間部材にすぎないものと認められるところ、引用発明においてもそのような中間部材の設置は適宜なされるものと認められるから、本願発明と引用発明との上記相違は、実質的な相違とは認められないものである。」と認定判断したことに原告主張の誤りはない。

五 よつて、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却する。

〔編注1〕本願発明の要旨は左のとおりである。

カメラ本体に着脱可能な撮影レンズの焦点調節を、カメラ本体に設けた制御手段によつて自動的に行なうレンズ交換可能なカメラの自動焦点調節装置において、撮影レンズにおける焦点調節のために可動なレンズ群を光軸方向に移動する移動機構と前記制御手段とを、レンズマウント部の開口を貫通する連動部材によつて連結可能とするとともに、制御手段は、撮影レンズ後方において該撮影レンズの焦点合致を検出する光電的手段と、連動部材の位置を規制する規制部材と、前記光電的手段の出力に応じて規制部材を制御する電磁手段を含む制御回路とを有することを特徴とするレンズ交換可能なカメラの自動焦点調節装置(本判決別紙本願発明図参照)。

〔編注2〕本件における図面は左のとおりである。

別紙本願発明図

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別紙引用発明図

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(他は省略)

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